【 患 者 】58才 女性
【 初 診 】
仕事のことで仲間からきつく言われたことがきっかけで、「うつ」に陥った。
若いころから、無駄話、立ち話など、無用のおしゃべりは一切しない、男のような性格だった。
現在、かかりつけの内科医に向精神薬を処方してもらっているが、調子は全くよくない。
集中力欠如+++(テレビ、新聞、頭に入らない。文章が書けない)、 焦燥感++、身体症状多数。 仕事を休んでいるが、非常にあせりを感じる。
35才の長女には病気のことは話してある。33才の次女は神経質なので、話すのがためらわれる。
88歳の母は、「うつ」になるのは当然のことだ、と言われるのが落ちなので話さない。
(脈)右尺弱、細
この患者さんの治療は、リラックスし、安静にできることを主眼におくことにした。こうすることで副交感神経系が優位となる。
その結果、患者は眠くなる。治療中も、家に帰ってからも、こんこんと眠り続けるようになるが、このように眠れるようになると、ほどなく快癒する。
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<2診> 3日後
前回、帰宅してから次女に何となく病気のことを話す気になって、話したら気が楽になった。
本日は、治療の間に眠くなった。
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<3診> 一週間後
集中力欠如++、焦燥感、イライラ
少しずつ余裕が生まれてきている。
イライラがひどい時は、しばらく眠ると楽になる。
次女が気を遣ってくれて、力になってくれる。
【 考 察 】
家族に自分の病気について話すことは、回復の助けになる。
話したくない時期に、強いて話す必要はないが、治療者から家族に話をすることも大切なことだと、ひと言アドバイスすると、患者はふと人に話をする気になる。
治癒に至る、重要な分岐点になる。
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<6診>初診から18日経過
日帰りの研修を、何事もなく乗り切れた。
集中力欠如+(小説を少し読むことができる)、焦燥感、イライラ
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<8診> 初診から4週間
ウトウトと眠い。言動にずいぶん余裕が見られるようになった。
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<10診> 初診から7週間
運転中に交通事故を起こした。車に追突され、整形外科を受診。
鍼治療を休むように言われた。
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<12診> 初診から9週間
鍼をしないと、集中力が維持できない。晩御飯に何を用意し、何を買ってくればよいか、考えをまとめられない。
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<16診> 初診から14週間
倦怠感+++、集中力欠如+++、イライラ++
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<13診> 初診から18週間=4ヵ月半経過
倦怠感++、集中力欠如+
途中から通いだした心療内科の通院は辞めようと思う。(院内が陰気、面談短い)
日中も眠くて、よく寝ている。
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[車の運転について]
「うつ」の患者は、人ごみの中に行くのを避けるため、電車に乗るよりも、車を運転して出かけたがる。しかし、集中力が散漫になっていたり、眠気が襲ったりして、自動車事故を起こすことが、ままある。
事故とその後始末で、ますます自己嫌悪におちいり、回復が遅くなる例を、私もいくつか経験しているので、車の運転は禁止すべきであると思われる。
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