■治療初期(1~3ヶ月)
のぼせ・目の痒みが改善。ただし、仕事が夜勤になるときには悪化。調子の良いときは、顔・腕など白い。治療開始当時なかった月経も始まった。
私の課題としては、左右の大巨穴にある圧痛を内熱=冷えの指標としていたので、なんとかこれを和らげるように努力していたが、実らなかった。
■経過Ⅰ(4ヶ月~1年経過)
この間は、調子の良いときは、背中はきれいになっていたが、臀部だけは赤く荒れたままで、ひどいときには盛り上がって、滲出液が染み出していた。
精神ストレスが、直接影響することが多く、とくに額にそれが顕著に現れた。
腹症も、顕著な変化はなし。
■経過Ⅱ(初診から1年~2年経過)
この期間の前半、治療としては、上肢陽明経に寫法をほどこすことを中心に行なった。
患者自身もサウナに通ったり、漢方薬を探したり、私の恩師である伊藤瑞凰先生のもとへ治療に出かけたり、様々な模索をしていた。
伊藤先生は以前より、アトピー性皮膚炎の治療にザン鍼と竹の節に粗艾をつめたもの=「竹の輪灸」を多用しておいでだった。私も、先生ご自身の口からこれを聞き、また研究会でもその実際を目の当たりにしていたのだが、あまりに簡易な道具なので、これを以て補寫ひと通り手技をする自信がなかった。
しかしながら、伊藤先生の治療に行った後の患者の様子を見ると、明らかに改善しているのである。これには打ちのめされた。
その結果、私自身も、使いこなせないと言ってはいられなくなったのである。
先生は同時に、木酢液・竹酢液も治療に活用しておられた。
患者さんに伊藤先生のザン鍼のタッチや木酢液の使い方を詳しく聞き、聞いたままに使いはじめたのが、治療開始より1年半経過したころである。
この間も全般的に見ると、調子の良い時は、臀部を除いては炎症が引いていたが、ストレスがかかったり、夜勤・飲酒の翌日などは顕著に悪化するという繰返しで、けっして快方に向かっているという実感はないのが現状だった。
■経過Ⅲ(2年目~)
ザン鍼と「竹の輪灸」を使いはじめて、効果が目に見え出したのは半年経ってからであった。
まず、額がはっきりと白くなり、背部・臀部が悪いままだった。手足も、大きな炎症部分があるが、これは内熱の出口なので、開けておいて構わないものと自信がもてるような調子になった。したがって、ここで直接皮膚に施灸しても悪化しないと予想できるようになり、事実、半米粒大の灸で、きちんと寫法の効果が出せるまでに、患者さんの体は戻っていた。 また、大巨の圧痛治療のために然谷穴を取るようにしたのも、改善に大いに役立っていたと考えられる。
この患者さんは、この後みずから鍼灸師になるための勉強をはじめて現在に至っている。そのきっかけとなったのは、無論のこと伊藤先生の治療であるが、アトピー性皮膚炎のような難しい治療が、私のような者にも可能であるという自信を与えてもらった意義は非常に大きかった。深く感謝している患者さんである。
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