header_nikos
       
 
 
 
 
 
 
 
 
治療日カレンダー料金access
 
難治症・希少症例
 

4. ≪胆石の痛みに対する鍼灸治療

 
胆石の痛みは、胆嚢から十二指腸にいたる総胆管に胆石が引っかかることによって起り、痛みは耐えがたいものがある。治療薬は、胆嚢の動きを止めることによって、胆石が下に落ちないようにするものだが、いったん落ちて、総胆管に痛みを発している石は、下に落としてしまうほかない。これは、鍼で総胆管をゆるめることによって可能である。
ただし、胆嚢の石がすべて出きってしまうわけではないので、根治というわけにはいかない。だが、引っかかっている石を下に落としておいたため、入院前の体力増強・入院後の手術の軽減に役立った治験例があるので、ここに記しておく。
 
【患 者】34歳男性
 
初診 
【主訴】患者は34歳の男性で、以前から胆石痛を覚えていたが、その都度、薬でおさえていた。できれば、手術して胆嚢をとり去ってしまうなことは、したくないという。昨夜は、2時頃、激痛のため、いつものように薬を呑んで一旦はおさまったが、今朝、食事をしたところ再発した。薬では痛みが止まらないが、鍼治療で止らないかと来院した。
(脈)緊・数 左関上弱い 
(標)左孔最、左膈兪、胆兪、胃兪。
右期門に置鍼して、右解谿を取る。のち、右期門、左胆兪に灸をそれぞれ3壮、5壮。
この日は、解谿に鍼をしているあいだに、胆石の痛みは止った。
何度か書いたことだが、胆石、尿管結石のさいに、解谿を取って下におとすのは、伊藤瑞凰先生の刺法である。
 
第二診 明くる日、夜間に痛みが再発したので来院。
この日は前日とちがって、白目が黄色く、顔も腹も黄色く見える。黄疸がひどく出ているので、たとえ痛みが止っても医師に診察してもらうべきだと告げる。偶然この日は、診察の日だったが、病院に行く前に痛みだけ止ればと思って来たとのこと。
(脈)緊・数 左関上が弱い
(治療) 期門・解谿を取っても、昨日のようには効かない。解谿のかわりに丘墟を取ると、これで幾分痛みは和らいできたと言う。
治療を終えて、痛みはなくなったが、右季肋部に違和感が残っていると言う。
ともかく、これで主治医の治療を受けに病院へいくというので、こちらも一安心する。
 
後日、電話があり、医師の診察を受けるまでに、痛みは完全に止っていたとのこと。
顔をみるなり、医師にすぐに入院と言われたが、夫人が幼児を二人も連れていたため、今回は帰宅して、次回痛みが出たときは、すぐ入院の準備をして病院へくるよう言われたとのことだった。こんなに顔が黄色くなるのは、総胆管がつまって、胆汁が逆流しているということらしい。
それから半月ほどして、胆嚢摘出の手術を受けたのだが、あの日、石を落としてあったので、手術までに体力を回復できたことと、総胆管に石がなかったので、ここの石を取り除く手術をしなくてもよかった、総胆管を開く手術までしていては、大変なことになるところだった、ということであった。
偶然がいくつか重なったが、終ってみれば、すべてがうまく噛み合っていたと、患者に感謝された一件だった。