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「うつ」に対する鍼灸治療 6
 

≪精神性の食思不振に対する鍼灸治療≫

 
 

【 患 者 】38歳/女性
男児3人の母親。自分では、自律神経失調症だという。
夫君はよく仕事をこなす働き者で、夫婦仲も良好。
前年の三月から四月にかけて、食欲がなく、痩せてゆくばかりなので入院したが、点滴して寝ているだけで、改善しなかった。
十一月にも入院したが、同様の治療・結果だった。
現在体重は30kg未満。
ほかに、便秘症で、痔の手術の既往歴がある。

(主訴)食欲にムラがあって、多量に食べるときもあるが、食べられない日が続いている。 

<1診> 
(脈)沈、右関上が弱い 
(標)照海・兪府・天ヨウを取る。これは、精神安定をはかる意味での取穴で、長野潔氏の配穴である。ほかに百会に灸を七壮すえ、肩甲間部、腰部、承山を刺す。便秘の改善をはかる目的で、両上肢をマッサージ。非常に気持ちよいという。
<2診> 四日後に来院
本日は、胃の重感がある。また便秘が辛いとうので、上肢・下肢・腹部のマッサージをまず行ない、その後鍼の治療を行う。
(鍼)内関に15分置鍼。百会に灸10壮。
百会の灸は、気持ちがよいという。

<3診> 三日後に来院
(治療)照海・内関の奇経を取る。百会に灸12壮。ほか、上・下肢のマッサージ。

<4診> 四日後に来院
(治療)同上
これまで、手足は水のように冷たかったが、この日から、足が温かくなり始めた。

<9診> 二月中旬
一週間ほど前から風邪をひいているが、夜、就寝すると咳が出始め、不眠。下肢浮腫。
(腹)胃実 胃の調子が上向いてきているので、つい食べ過ぎとなる。

<10診> (治療開始して一ヶ月経過) 一週間後に来院
咳は止ったが、膝から下の浮腫がひどくて、歩きにくい。朝、起きるのは楽になった。また、治療した日か、その翌日には、便通がある。

<11診> 二日後に来院
下肢浮腫はひどいが、食欲はある。しかし、体重は増えない。患者に、食べられるようになって有難いと感謝されるが、複雑な気分である。
(脈)右寸関が強い 脾の実症と診る。
(治療)灸:裏内庭・三里・腎兪・脾兪・百会

<12診> 二日後に来院。
(治療)この日から、腹部に灸を据える。中かん、左天樞、水分の各点。他に腎兪、百会。 腹部の灸は熱いが、気持ちよいという。

<13診> 二日後に来院
前回は帰宅して後、よく便通がついた。
(脈)左右ともに、二重の脈
(治療)前回と同じ腹部、背部穴に施灸。

<14診> 三日後に来院
(脈)左右ともに、二重の脈
(治療)前回と同じ腹部、背部穴に施灸。また、太白、太谿、三里、三 陰交にも施灸。
足の浮腫以外は、気分、食欲、便通など良好である。

<15診>  二日後に来院
腹部に灸をすえはじめてから、食欲が安定してきたとのこと。
(治療)同上

<16診>三日後に来院
(脈)二重脈なくなり、弱脈
(治療)同上

<17診> 三日後に来院
便通隔日にあり、食欲も増してきた。目の光、表情しっかりしてきた。

この日をもって、この患者の治療は一区切りにしている。もうしばらく続けたほうが良さそうであったが、患者のどこか先を急ぐような性格が、そうさせたのかと思われる。一時は、玄関先でつまづいて倒れたまま、起き上がる体力もなかったほどだったが、このころは、自転車で町を疾走している姿も見ている。
ひと月半の治療であったが、よく回復したと私も驚いた患者だった。