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「うつ」に対する鍼灸治療 5
 

≪過食症に対する鍼灸治療≫

 
 
【 患 者 】22歳/女性 
最初は頚肩部の凝り・腰痛が主訴で、マッサージを受けに来院したのだが、何のきっかけからか、自分からすすんで、うつ病と摂食障碍があることを話してくれた。 


<1診>
3年前から、甘いものが食べたくなり、食べるとやめられない。
食事は、日に一度というのが週三日。他の日はニ、三食。

(脈)緩、右寸関が弱い 
(腹)腹の拘結部位にしたがって、行間、商丘、中封を取る。
(標)脈症と腹症をととのえて、本日は本人の希望通りマッサージを行なう。
マッサージをしながら、市内の精神・神経科医院に3ヶ月通院しており、その結果あまり落ち込むことがなくなったという話。薬のせいか、眠く、疲れやすい。が、一番の問題は、過食のこと。

<2診>  三日後
(腹)行間 
(標)照海、左心兪を取る。百会に灸を5壮。
食べる量が多いだけあって、心窩部の痞えがひどい。これを行間で瀉して、標示法で精神安定をはかる治療を行なう。
病院で処方されている治療薬は、ミラドール(スルピリドが有効成分の抗不安薬で、胃腸の潰瘍を改善する効果が同時にあるため、胃腸障碍を持つ精神病患者に、しばしば処方されるのを見る)、メイラックス(ベンゾジアゼピン系向精神薬)、ピレチア(抗炎症剤)。
できるだけ鍼の治療も受けたいが、学生なので、経済的な余裕がない。間があくことがあるかもしれないが、それでもかまいませんか、という。こればかりは、仕方がないので、来られる時においで下さいと私も答えた。

<3診> 十日後に来院
前回治療の一週間後から、御飯・そば・うどんなどが食べたくなってきた。代って、甘いものは欲しくない。夜三時ころ、子供をさらう夢、魔女になる夢などの不安夢、怖い夢をみて目覚める。この話をしたところ、精神科で睡眠薬(ロヒプノール)を処方された。
(治療)同上

<4診> 二週間後に来院
この間に帰郷。ドロドロした夢を見ることがなくなった。甘いもの、過食も自制できるようになり、治ってきた気がする。
(治療)同上 腰痛を訴えるので、L5、左志室を取る。

<5診> 三週間後に来院
故郷に帰りたくなって、再度帰郷。母親に病気のことを打明けて、心が軽くなった。自分には、ボーッと夢想に耽る時間が必要で、東京にいるとストレスが溜まることを改めて実感したという。
また、少時より姉とともに、親に負担をかけまいと心をくだいてきたが、学資を姉よりもはるかに多く出してもらっている負い目を、強く感じるという。
(症状)卒業間近で、卒論などのストレスのため、めまい・吐き気
(腹)右三陰交、大巨、左行間 
(標)風池、解谿、右心兪・肺兪
(考察)気の病の患者の場合、往々にして肩甲間部の右側に拘結が現われる。この患者は、初回よりしばらくの間、左側にこれがあった。ここに来て、ようやく常態になったと思われる。

<6診> 二週間後に来院
精神科医院に通うのをやめた。薬も服用していない。睡眠、食事は規則正しく取ることができるようになった。
(症状)めまいを少し感じる。心窩部に不快感がある。肩が凝って苦しいというので、めまい・胃の不快感は、肩こりによる迷走神経の緊張であろうと診る。両胸鎖筋はひどく緊張している。
(治療)筋緊張緩和のため、解谿を取る。

<7診> 26日後に来院
二週間ほど前から、また食べたくなってきた。胃がもたれる。
(治療)肝兪、脾兪を取る。

この後、胃のもたれ、腰痛など個々の症状のため、数度来院しているが、その後は訪れていないが、時々来院するパートナーの男性から、元気である旨は聞いていた。
この患者が、治療回数が少ないわりに、スムーズに治癒していったのは、治る時期に差しかかっていたこと、パートナーがうまくサポートしてくれたこと、帰郷のタイミングがよかったことなど、プラス要因がいくつか重なったためと思われる。